最先端研究探訪(とくtalk195号)

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計算科学の研究者と共同で、ウイルスが変異できない急所を探し出す

医学部 教授 野間口 雅子(のまぐち まさこ)

野間口雅子
新入生へ「漫然と過ごすんじゃなくて、何かに興味関心を持って
取り組み、『これを1年頑張った』、『大学生活で良い経験を積んだ』
と思えるような時間を過ごしてほしい」というメッセージをいただ
きました。

 目に見えないウイルスの脅威に翻弄されたコロナ禍。この出来事をきっかけに、ウイルスに関心をもった人も多いのではないでしょうか。
 ウイルスは最小の生命体。しかしウイルス単体では生きていくことはできません。
 「ウイルスが生存し続けるためには、生きた細胞が必要」という野間口先生。
 「細胞なら何でもいいわけではなくて、種特異性があり、HIVウイルスなら人にだけ感染して病気を発症します。ウイルスの生存能力はその高い変異性や適応力で決まっているので、ウイルスがどのように変異するのか、どのように適応しているかについて興味を持っています」。

 

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ウイルス学に興味のある人におすすめの映画
『コンテイジョン』。致死率の高いウイルスにより
パニックに陥る世界を描いたスリラー。

 ウイルスの生態を調べ、知見を積み重ねることで、ウイルスの変異を予測することを目標に研究を進めています。主な研究対象はヒトの病原性ウイルス(HIV-1やSARS-CoV-2)ですが、今後はデングウイルスなどにも対象を広げていく予定だそう。
 ウイルスはそれぞれ固有の形状で、その構造は「めちゃくちゃキレイ」という野間口先生。この構造が壊れると感染力もなくなり、スパイク(ウイルスの表面にあるタンパク質)にウイルスにとって都合の悪いアミノ酸が1個入るだけで、死んでしまうのだとか。
 こうしたウイルスの構造配列に着目し、計算科学の研究者と共同で「ウイルスが変異できない急所を探すプロジェクト」に取り組んでいます。

 

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「ウイルス学は瞬発力より、コツコツちゃんと続けて持続的にやれることが大事」という
野間口先生。ウイルス学に興味をもつ海外からの留学生も増えているそう。

 コンピュータ上での構造解析を行うイン?シリコ構造解析という手法で、ウイルスに変異が発生した際、構造がどう変わったか、どのような機能の変化がおこったかをデータ化し、より詳細にわかるようになったといいます。
 「この研究を10年くらいやっていますが、うまく回りだしたのはここ2、3年。計算科学と組み合わせることで、実験ウイルス学だけでは見つからなかったことが見出せるようになりました」。
 新しいアプローチがウイルス感染症の予防、治療、対処の向上へとつながることが期待されます。

 

野間口 雅子(のまぐち まさこ)のプロフィール

野間口雅子
医学部 教授

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