疯狂体育,疯狂体育app下载2年度 若手研究者学長表彰 疯狂体育,疯狂体育app下载報告
徳島大学大学院社会産業理工学研究部理工学域光応用系光情報システム分野 准教授 岸川 博紀
光渦(ひかりうず)を用いた光無線通信における大気乱流の影響補償
【研究グループ】
徳島大学大学院社会産業理工学研究部理工学域光応用系光情報システム分野 准教授 岸川 博紀
徳島大学大学院社会産業理工学研究部理工学域光応用系光情報システム分野 教授 後藤 信夫
【疯狂体育,疯狂体育app下载を得られた経緯】
本研究は光通信の大容量化に資する特別な構造を持った光波である光渦に関するものである。屋外の空中を伝搬する光無線通信では、気温や気圧、風などの影響で大気屈折率がランダムに変動し、その影響で光無線信号が乱れ、受信信号品質が劣化する課題がある。特に位相分布に特徴がある光渦はその影響を顕著に受ける。本研究では大気乱流の影響で乱れた光渦の位相分布を適応的に補償する新たな手法を考案し、受信信号品質の劣化を抑える光無線通信の要素技術を確立した。
【学術誌等への掲載状況】
- Hiroki Kishikawa, Haruya Kishimoto, Noriyuki Sakashita, Nobuo Goto and Shien-Kuei Liaw, “Pilot beam-assisted adaptive compensation for atmospheric turbulence in free-space optical transmission of beams carrying orbital angular momentum,” Japanese Journal of Applied Physics (Special Issue), 1.Vol.59, No.SO, SOOD03-1-SOOD03-8, May 2020.
- Haruya Kishimoto, Noriyuki Sakashita, Hiroki Kishikawa, Nobuo Goto and Shien-Kuei Liaw, “Reference Beam-Assisted Broadband Adaptive Optics Compensation for Atmospheric Turbulence on Orbital Angular Momentum Beams,” OSA Advanced Photonics Congress 2020, No.SpM2I.2, Jul. 2020.
- Noriyuki Sakashita, Haruya Kishimoto, Kyosuke Matsusue, Hiroki Kishikawa, Nobuo Goto and Shien-Kuei Liaw, “Pilot Beam-Assisted Adaptive Compensation for Atmospheric Turbulence-Induced Phase Fluctuation on Beams Carrying Orbital Angular Momentum,” 25th OptoElectronics and Communications Conference 2020, No.VP46, Oct. 2020.
光渦とは光波伝搬の物理的性質を用いて軌道角運動量を持たせた光ビームのことである。図1に示すように、光渦は螺旋状の等位相面を持ち、絡み合う螺旋の数で次数が決まり、異なる次数の光渦は互いに直交していることが特徴である。したがって、異なる次数の光渦それぞれに情報を載せることで多重化が可能である。光通信で従来から用いられてきた多重化の物理量である直交変調、波長、偏光に次ぐ新たな多重化の次元となり、光通信網の大容量化に寄与すると期待されている。
図2に光渦を用いた光無線通信における大気乱流の影響補償法を示す。通信データを送る光渦とは別に、大気乱流を検知して適応補償するための専用の光渦を用いることが特徴である。通信データ用光渦と乱流検知用光渦を同軸で屋外空間伝送することで、両光渦は大気乱流の影響を等しく受けて振幅?位相が乱れることになる。受信側にある適応補償部では、まず乱流検知用光渦を分離し、波面センサ等を用いて乱れた位相分布を検知し、補正用の位相情報を生成する。その情報を基に通信データ用光渦の位相を補正することで、位相の乱れを補償した光渦が得られる。図2には光渦の光強度分布と位相分布も示しており、大気乱流によって乱れた位相分布が適応補償によってほぼ元に戻っていることから、大気乱流による信号品質の劣化を抑えることができる。
本研究では大気乱流の影響で乱れた光渦の位相分布を適応的に補償する新たな手法を考案し、受信信号品質の劣化を抑える光無線通信の要素技術を確立した。ただし図2に示すように本手法は位相分布のみを補正しているため、光強度分布は乱れたままである。これでも受信信号品質は大きく改善するが、光強度分布も同時に補償する方法を確立できれば更なる品質改善が期待できるため、今後の検討課題としたい。