1)はじめに
法人化後第3期目となる平成18事業年度財務諸表について、徳島大学では、監事の監査及び会計監査人の監査を受けたうえで、平成19年9月11日に、文部科学大臣の承認を受けましたので、徳島大学の決算の状況についてご報告申し上げます。
また、表示単位は表では百万円単位ですが、ここでの説明は四捨五入して億円単位としています。
財政状態
国立大学法人の財務諸表は、国立大学法人会計基準及び国立大学法人会計基準注解、並びに国立大学法人会計基準に関する実務指針に従って作成することとされています。
国立大学法人会計基準は、企業会計原則を基礎としつつ、独立行政法人会計基準を踏まえて、国立大学法人の主たる業務内容が教育?研究であること、学生納付金や附属病院収入等の固有多額の収入を有すること、国立大学法人間における一定の統一的取り扱いが必要とされることなどの特性に配慮して、必要な修正が行われています。
財務諸表を理解するに当たって、国立大学法人特有の会計の取扱いを知っておくことが大切です。企業会計と比較しての国立大学法人の特徴的な会計の取扱いは次に述べるとおりです。
国立大学法人 会計基準の特徴
国立大学法人の財務諸表は、国立大学法人会計基準及び国立大学法人会計基準注解、並びに国立大学法人会計基準に関する実務指針に従って作成することとされています。
国立大学法人会計基準は、企業会計原則を基礎としつつ、独立行政法人会計基準を踏まえて、国立大学法人の主たる業務内容が教育?研究であること、学生納付金や附属病院収入等の固有多額の収入を有すること、国立大学法人間における一定の統一的取り扱いが必要とされることなどの特性に配慮して、必要な修正が行われています。
財務諸表を理解するに当たって、国立大学法人特有の会計の取扱いを知っておくことが大切です。企業会計と比較しての国立大学法人の特徴的な会計の取扱いは次に述べるとおりです。
1.運営費交付金
国から運営費交付金を受領したときは、運営費交付金債務として負債計上し、行うべき業務を実施すると、その相当額を収益化の基準に従って収益化する仕組みとされています。国立大学法人では、原則として時の経過に伴い業務が実施されたものとみなす期間進行基準によっていますが、一部の費用については、業務の実施に伴って処理する成果進行基準、費用の発生額によって処理する費用進行基準が用いられています。
運営費交付金で固定資産を取得した場合、研究機器等の償却資産は資産見返勘定である資産見返運営費交付金等に、土地、美術品などの非償却資産の場合は資本剰余金に振り替えます。資産見返運営費交付金等は、減価償却処理を行う都度減価償却費と同額を取り崩して収益化し、損益を均衡させることとしています。
2.授業料
当該年度に係る授業料を学生から受領したときは、授業料債務として負債計上し、運営費交付金債務と同様の会計処理を行います。
3.施設費
国から施設費を受領したときは、預り施設費として負債計上し、建物等の対象資産の取得時に資本剰余金に振り替えます。当該資産が教育研究に用いられる場合、収益の獲得が予定されないため、後述の「減価償却処理の特例」により、資本剰余金を直接減額する会計処理を行います。
4.寄附金
使途が特定された寄附金を受領したときは、寄附金債務として負債計上し、使途に即して費用が発生する都度、その同額を収益化し損益を均衡させます。固定資産を取得する場合は、運営費交付金債務と同様の処理を行います。
5.減価償却処理の特例
教育研究に用いるため、減価に対応すべき収益の獲得が予定されない償却資産として特定されたものは、減価償却費について通常の損益処理ではなく、減価償却相当額を資本剰余金から損益外減価償却累計額として減額する会計処理を行います。
国立大学法人の損益計算書は、基本的に運営状況を反映することを目的としていますが、このような資産の減価償却相当額は、各期間に対応する収益の獲得が予定されず、資産の更新の財源は国が施設費を措置する仕組みとされていることによるものです。
6.退職給付引当金
運営費交付金により、退職一時金の支払いに充てる財源措置がなされることが明らかであれば、引当金の計上は不要とされています。
7.利益処分
損益計算上の利益が生じた場合は、まず前年度からの欠損を補填し、残額があれば原則、積立金として赤字の補填にのみ使用可能とされます。文部科学大臣の承認を受ければ、中期計画の範囲内において、国立大学法人の裁量により例えば、教育研究の質の向上などに使用できる目的積立金として処理します。
8.図書
通常の償却資産について、独立行政法人同様50万円以上のものが資産計上の対象ですが、教育研究のために使用する図書は金額の如何に関わらず資産計上します。使用中は減価償却処理を行わず、除却時に全額を費用処理します。
平成18事業年度 決算の概要
貸借対照表は、3月31日現在の資産、負債及び資本を記載することで、徳島大学の財政状態を表します。
資産の部
徳島大学の資産の総額は1010億円であり、前年度に対して18億円(対前年度比‥約2%)増加しています。前年度末に比べ、固定資産が12億円減少した一方で、流動資産が30億円増加しています。
固定資産減少の主な要因は、その他に計上されている現在建設中の附属病院西病棟に係る資産が10億円増加したのに対し、償却資産の価値の減少(減価償却)などで11億円減少、有価証券への分類替えによる投資有価証券の減少で10億円減少したためです。
流動資産増加の主な要因は、現金及び預金が19億円増加、さきほどの投資有価証券からの分類替えによる有価証券が10億円増加したためです。
負債の部
負債の総額は466億円であり、前年度に対して1億円(対前年度比‥約0.3%) 増加しています。前年度末に比べ、固定負債が4億円減少した一方で、流動負債が5億増加しています。
固定負債減少の主な要因は、その他に計上されているリース債務が13億円増加したのに対し、長期借入金が17億円減少したためです。
流動負債増加の主な要因は、寄附金債務が2億円減少、その他に計上されている賞与引当金が3億円減少したのに対し、運営費交付金債務(運営費交付金の未執行相当額)が3億円増加、一年以内返済予定借入金が2億円増加、未払金が6億円増加したためです。
資本の部
(2)損益計算書(表2損益計算書の要旨参照)
経常費用
経常費用の総額は358億円であり、前年度に対して4億円(対前年度比‥約1%)減少しています。構成は、人件費が全体の約51%、物件費が約47%、財務費用が約2%となっています。
人件費は、総額で184億円であり、前年度に対して1億円(対前年度比‥約1%)減少しています。減少の主な要因は、常勤教職員給与の減少のためです。
物件費(固定資産購入額除く)は、総額で168億円であり、前年度に対して2億円(対前年度比‥約1%)減少しています。減少の主な要因は、複数年契約導入による減少、資産の価値の減少に伴う費用化(減価償却費)の減少のためです。
財務費用は、総額で6億円であり、前年度に対して0.6億円(対前年度比‥約9%)減少しています。
経常収益
経常収益の総額は378億円であり、前年度に対して9億円(対前年度比‥約3%)増加しています。構成は、国からの補助が全体の約43%、学生納付金や附属病院収入等の自己収入が約49%、外部資金が約8%です。
国からの補助は、運営費交付金収益、施設費収益、補助金等収益、及び減価償却費相当額に対応する資産見返負債戻入(運営費交付金、補助金、物品受贈に係るもの)が該当し、総額で160億円となり、前年度に対して5億円(対前年度比‥約3%)増加しています。増加の主な要因は、運営費交付金が1%の効率化係数(運営費交付金を充当して行う業務について毎年1%の業務の効率化が図られています。)及び2%の経営改善係数(附属病院運営費交付金を受ける附属病院については、平成17年度以降に平成16年度病院収入予算額の2%に相当する額が毎年度運営費交付金から減額され、経営の効率化を求められています。)により合わせて3.5億円減少したのに対し、退職給付費用相当額に対応する収益額の増、医学部の建物改修に伴う施設整備費補助金の増、競争的資金である補助金の獲得による増などで6億円増加したためです。
自己収入は、学生納付金(授業料、入学金、検定料収益)、附属病院収益、資産見返負債戻入(授業料に係るもの)、財務収益、雑益が該当しますが、総額で191億円であり、前年度に対して1億円(対前年度比‥約1%)増加しています。増加の主な要因は、財産貸付料、科学研究費の間接経費が増加したためです。 外部資金は、受託研究等収益、受託事業等収益、寄附金収益、資産見返負債戻入(寄附金に係るもの)が該当し、総額で27億円となっています。受託研究、受託事業の契約件数の増加により、前年度に対して3億円(対前年度比‥約14%)増加しています。
経常利益、当期純利益及び当期総利益
経常収益から経常費用を差し引いた経常利益は20億円であり、前年度に対して13億円増加しています。増加の主な要因は、附属病院における診療収入の増加、及び効率的な業務の実施に伴う経費の節減など経営努力によるものです。セグメント別の経常利益内訳は附属病院で10億円、学部等で10億円です。
経常利益に訴訟費用など臨時損益を加減して当期純利益を計算しています。当期純利益に目的積立金取崩額(前期までに積み立てた目的積立金の目的使用による取崩額)を加算し当期総利益を計算しています。
(3)キャッシュ?フロー計算書(表3キャッシュ?フロー計算書の要旨参照)
キャッシュ?フロー計算書は、一会計期間におけるキャッシュ?フローの情報を「業務活動によるキャッシュ?フロー」、「投資活動によるキャッシュ?フロー」、「財務活動によるキャッシュ?フロー」の3つに区分して表示したもので、簡単にいえば、一会計期間の「お金の出入り」を表します。(ここで言う「お金」とは、手元現金と普通預金を言います。企業会計におけるキャッシュ?フロー計算書の資金の範囲とは、規則上異なります。)
業務活動によるキャッシュ?フローは61億円、投資活動によるキャッシュ?フローは△70億円、財務活動によるキャッシュ?フローは△27億円で、資金期末残高は48億円であり、前年度に対して36億円(対前年度比‥約43%)減少しています。減少の主な要因は、定期預金の取得のためです。
なお、貸借対照表の「現金及び預金」には手元現金及び普通預金の他に定期預金が含まれています。
(4)国立大学法人等 業務実施コスト計算書
(表4国立大学法人等業務実施コスト計算書の要旨参照)
国立大学法人等業務実施コスト計算書は、徳島大学の業務運営に関して最終的に国民の負担となるべき現在及び将来のコストを表します。この計算書に記載する事項は国立大学法人会計基準に定められています。
国民の負担となる実質的なコストは160億円であり、前年度に対して3億円(対前年度比‥約2%)増加しています。この額は、業務費用(損益計算書を基礎としつつ、納税者である国民の負担とはならない自己収入等を控除)に損益計算書に計上されない3つのコスト(1損益計算を通じない場合の減価償却相当額、2引当金を計上しない場合の退職給付増加見積額、3機会費用)を加減して計算したものです。増加の主な要因は、業務費用が6億円減少し、損益計算を通じない場合の減価償却相当額が5億円減少し、機会費用が1億円減少したのに対し、引当金を計上しない場合の退職給付増加見積額が15億円増加したためです。
(5)決算報告書(表5決算報告書の要旨参照)
決算報告書は、予算の区分で作成し、予算計画と対比して執行状況を表す書類であり、基本的に現金主義で作成しています。
収入から支出を差し引いた余剰額15億円の主な要因は、運営費交付金対象事業(運営費交付金及び自己収入)によるものです。
運営費交付金対象事業に余剰額が生じた理由は、収入においては附属病院の診療収入が13億円増加したためです。一方支出においては、業務費及び一般管理費で2億円の余剰が生じています。これは附属病院の診療収入の増に伴う診療経費が7億円増加及び一般管理費が1億円増加したのに対し、教育研究経費が10億円(退職金の不要額3億円含む)減少したためです。
なお、文部科学省の実施するプログラムに採択されたことによる補助金等収入や産学連携等研究収入及び寄附金収入等も増収に大きく寄与していますが、その分支出も伴っているため余剰額を構成する要素とはなっていません。
おわりに
平成18事業年度の徳島大学は、利益を計上していますが、競争的資金の獲得に伴う研究関連収入の大幅な増加、病院収入その他の業務収入の増加、業務の効率的な実施による経費の削減など、経営努力による利益のほかに、国立大学法人における固有の会計処理による非資金的項目も含まれております。本学の経営努力によって生じた利益については、目的積立金として文部科学大臣の承認を受けた後、中期計画を踏まえながら効率的な活用を図っていくことになります。
一方で、徳島大学の財政基盤の多くは運営費交付金等の国からの補助で支えられていますが、法人化翌年の平成17年度から1%の効率化係数や2%の経営改善係数がかかり、本学の場合、3.5億円が毎年減額され続けています。このことは中期計画期間(平成16年度~平成21年度の6年間)中の財政基盤が毎年苦しくなることを意味しています。
このような厳しい財政状況でありますが、本学は「知を創り、地域に生き、世界に羽ばたく徳島大学」として、教育?研究?社会貢献及び診療の各分野にわたり、その充実を図るとともに不断の見直し?改善を今後とも進めて参る所存でございますので、今後ともご指導、ご支援をよろしくお願いいたします。
決算の詳細はこちらをご覧下さい。