第72回日本栄養改善学術集会が9月12日から15日まで東京農業大学で開催された。
受験の時、東京農業大学を受験したことがある。下見も含めて複数回訪れたことがあり、その印象はキャンパスにはたくさん土があり木があることだった。経堂という駅で降りて、一本道を進み大学まで辿り着いた記憶がある。今回も経堂駅で降り、商店街を抜け、そのまま通学路沿いを歩いているのだが一向に大学らしい建物を見つけることができない。あれこれ迷い歩いていると遠くに背の高い建物を見つけることができた。到着するとグランドは土から人工芝へ、緑に覆われた建物は近代的な校舎になっていた。時の流れで景色が大分変わった。
今回の学会で、仕事らしい仕事は、学会賞等受賞者講演の座長くらいであった。今回は、学会賞は該当なしで、奨励賞が2人。そのうちの1人は当教室の中本(晶子)助教で、側から見れば身内の者の講演の座長という少し歪な感じに映るかもしれない。受賞講演は、ビタミンAと経口免疫寛容、柑橘類果皮に含まれるフラボノイドの免疫調節作用を中心とした25分間の講演。受賞講演なので、会場からの質問は受け付けないが、座長として内容をまとめなくてはいけない。といっても身内なので賞賛する言葉ではまずい。「スダチの果皮なんか食べられないと思っている方もいますが(話に出てきたスダチチンは唯一スダチにのみ含まれるフラボノイド)、そうめんのつけ汁にスダチの皮をすりおろし入れると風味が出て美味しいですよ。」と徳島県をアピールしたが効果はどれだけあったかは不明だ。
先日も、そうめんを茹で学生さんにスダチの皮をすりおろしたつけ汁で試食してもらった。この食べ方が今でも心の隅に残っているのは、ある出来事があったから。今から20年以上前、保育園に通っていた息子が熱を出し、何か食べたいものがないか(母親が)聞いたら、“そうめん”と答えた。“そうめん”は、さっぱりしていて食欲がない時でも食べられる料理の一つである。ただ、スダチの皮を剃ったつゆで食べたいといい、冬季で最も値段が高いスダチを泣く泣く買ったことを覚えている。スダチの路地物はちょうど8月下旬から9月にかけて獲れ、生産のピークを迎える。当然、今の値段が一番安い。高い時だと、スダチ1個が100円くらいする時がある。
話は変わるが、現在開催されている世界陸上で、徳島県に馴染みが深い企業である大塚製薬株式会社に所属する小林香菜選手が7位入賞を果たした。新聞では、大学時代は競技部活には所属せず、サークルに入っていたそうだ。走力の実力をつけ、卒業後は実業団競技部への入部を希望したが、サークル所属とのことで企業の目は厳しかった。伝手でなんとか大塚製薬に入社できたとされている。“もし”あの時、実業団に入れなかったら。振り返って、私が学部を卒業した時、大学院を修了した時、医学科で助手を勤めていた時、“もし”選択を変えていたら、今どうなっていたか。選択が正しかったのかそうでなかったのかは誰にも分からない。