医学研究科
吉田あつ子
徳島大学病院 産科婦人科医師(講師)
松本 穣
徳島大学大学院医歯薬学研究部 講師
医科栄養学研究科
多々納(福田)詩織
島根県立大学看護栄養学部 健康栄養学科 助教
大井 彰子
滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部 主任管理栄養士
佐々木 祥平
在ベトナム日本国大使館 一等書記官
保健科学研究科
生涯健康支援学領域 氏家翔子
医療法人社団三愛会三船病院 看護師
医用情報科学領域 笠井亮佑
徳島大学大学院医歯薬学研究部 助教、診療放射線技師
医用検査学領域 安藝健作
徳島大学大学院医歯薬学研究部 准教授
吉田あつ子
職業: 徳島大学病院 産科婦人科医師(講師)
〇プロフィール
2008年 3月 徳島大学医学部医学科卒業
2008年 4月 徳島大学病院3病院プログラム 初期研修医
(徳島市民病院、徳島県立中央病院、徳島大学病院)
2010年 4月 徳島大学病院 産科婦人科 医員
2011年 4月 香川小児病院 産科
2013年 1月 高知赤十字病院 産婦人科
2014年 4月 徳島大学病院 産科婦人科 医員
2016年 7月 徳島大学病院 地域産婦人科診療部 特任助教
2018年10月 徳島大学大学院医科学教育部医学専攻博士課程修了
2019年 4月 徳島大学病院 産科婦人科 医員
2019年 7月 吉野川医療センター 産婦人科
2019年 9月 徳島大学病院 産科婦人科 医員
2019年10月 徳島大学病院 周産母子センター 特任助教
2020年10月 徳島大学大学院 医歯薬学研究部 助教
2023年 4月 徳島大学病院 周産母子センター 講師
〇現在の仕事内容について
大学病院で産科婦人科医師として勤務しています。専門を周産期としており、大学病院は総合周産期母子医療センターのため、徳島県のハイリスクな妊娠?分娩も含めて診療にあたっています。
〇博士課程に進学したきっかけ
元々、自分が研究をするという発想はあまりなく、「研究」という言葉には苦手意識すら持っていました。ですが、上司の勧めもあり、進学して、母体循環をテーマに研究することとなりました。
〇博士課程に進学したメリット
研究を実際に自分が行うことで、医学や論文に対する見方や考え方に大きく変化があったと感じています。それまでは教科書や先輩たち、学会や勉強会で教えてもらったことが全てでした。ですが、自分が研究するとなると、最新の情報を得るために、自分で論文を探し、読み、研究手法や検討方法、そもそもそのどん分野研究の妥当性?信憑性などを調べ判断していく必要があります。その過程を繰り返すことで、これまでよりもっと最新の知見を、幅広い視野で、調べ、検討し、診療に取り入れることが可能となりました。学ぶ方法は本や勉強会など作り与えてもらうだけでなく、自ら貪欲に追求することで、いくらでも広げ深められるものだと感じました。研究と臨床は密接に関わっていることを体感する貴重な経験であったと思っています。
〇博士課程に進学を考えている方へ
研究にそもそも興味のある方はともかく、私のように研究という言葉に縁遠く感じる方や、苦手意識(おそらく食わず嫌いに近いと思いますが)を感じる方は、少なくない気がします。研究は決して簡単ではなく、時に苦しい時もありますが、一つ研究をやり遂げた時には、視野も知識もこれまでと全く異なるものとなり、臨床の現場での考え方にも良い意味で大きな影響を与えてくれます。医師としてのステップアップの一手段として、進学を検討するのもアリではないでしょうか。
松本 穣
職業:徳島大学大学院医歯薬学研究部 講師
〇プロフィール
2015年 3月 徳島大学医学部医学科卒業
2015年 4月 徳島県鳴門病院 初期研修医
2017年 4月 徳島大学病院病理部 医員
2018年 9月 徳島大学大学院医歯薬学研究部 疾患病理学分野 助教
2020年 6月 徳島大学大学院医科学教育部医学専攻博士課程修了
2020年10月 徳島大学大学院医歯薬学研究部 分子病理学分野 助教
2021年 8月 徳島大学大学院医歯薬学研究部 分子病理学分野 講師
〇現在の仕事内容について
病理医としての診断業務に加えて、大学教員として基礎研究や学生の教育に従事しています。診断業務では、患者さんから採取された病変の組織を顕微鏡で観察し、適切な病理診断を行うことで、その後の治療方針の決定に携わっています。日々の業務のなかで実際の病変を観察する機会が数多くあり、そこで直面する疑問や解決課題に取り組むため、基礎研究に尽力しています。しかしながら、病気の理解には顕微鏡による形態観察だけでなく、その背景にある遺伝子のダイナミックな変化を知ることがとても重要です。そのためには膨大な量のデータ処理が必要となるため、最近はコンピュータを用いたバイオインフォマティクス解析に取り組んでいます。
〇博士課程に進学したきっかけ
学部学生の頃に研究室配属で免疫学教室にお世話になる機会があり、その頃から基礎研究に興味を持つようになりました。また、病理に入局した際に恩師である常山幸一先生(徳島大学疾患病理学分野?教授)からの勧めもあり、大学院への進学を決意しました。
〇博士課程に進学したメリット
研究に取り組むまでは教科書に書かれていることが全てで、教科書を読めば何でもわかる、というような錯覚に陥っていました。しかしながら、医学にはまだわからないことが山のようにあり、現在の診断や治療は日進月歩でアップデートされていく基礎研究の積み重ねであることを実感できたのは自分にとって大きな学びでした。もちろん医学研究は患者さんの治療につなげるため、ということが大原則ですが、自分が独自に立てた仮説をこれまでに学んできた知識を総動員して実証することができた際の知的探究心の充足感は何ものにも代えがたく、そのような喜びを知ることができたのが最も有意義であったと感じています。
〇博士課程に進学を考えている方へ
医師の場合は日々の業務と研究の両立の難しさに直面することも多々あるかと思いますが、その苦労によって得られる経験はかけがえのないもので、医師としての幅を広げてくれるはずです。また、基礎研究では教科書に載っていない事象を追求し、それを発表するという一種の自己表現が大きな魅力だと感じています。そのような知的探究心に従って自由に研究に専念できる環境は、大学でしか得られないと思います。具体的な将来像までは思い描けていなくても、研究に一生懸命に取り組むことで、初めてひらけてくる世界もあるはずです。悩んでいる方は、ぜひ研究の世界に飛び込んでみて、学びを深めてもらえればと思います。
多々納(福田)詩織
職業 大学教員(助教)
〇プロフィール
2014年3月 徳島大学医学部栄養学科卒業
2016年3月 徳島大学大学院栄養生命科学教育部
人間栄養科学専攻博士前期課程修了
2018年4月 島根県立大学看護栄養学部
健康栄養学科 助教(現在に至る)
2019年3月 徳島大学大学院栄養生命科学教育部人間栄養科学専攻博士後期課程修了
〇現在の仕事の内容について
管理栄養士養成施設である島根県立大学看護栄養学部健康栄養学科で働いています。「教育?研究?地域」が仕事の3本柱です。教育では、管理栄養士を目指す学生と一緒に、授業を通して栄養学のおもしろさを再発見しています。研究では、大学院でご指導いただいた研究をベースに、自分らしさを出しながら研究を進めています。ありがたいことに、科研費を獲得しているので、より一層励んでいきたいと思います。地域では、高校生の食育や地域食材を用いたレシピ作成を通して地域の方々と交流し、栄養学を深めていくヒントをいただいています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したきっかけ
栄養学を研究している先生方や先輩方の姿がかっこよかった!ということがきっかけです。学部生で研究室配属されるまでは全く研究に興味がなく、卒業したら就職しようと思っていました。3年生の冬に研究室配属され、まず一番に、研究室の先生方や先輩方の魅力に引き込まれました。素敵な方々に囲まれ、自然と研究のおもしろさも教わり、修士課程だけでは物足りず、自分の進路の幅を広げるためにも進学しました。
〇博士課程?博士後期課程に進学したメリット
私が今の仕事ができているのは、博士号を取得したからこそです。博士号をとっても「足の裏の米粒」だとよく言われますが、その米粒がないと就職できない場所も多くあります。また、博士課程での学びがあったからこそ、広い視野で研究に取り組むことができていると感じますし、研究以外の業務でも気持ちに余裕を持ちながら取り組むことができていると感じています。
〇博士課程?博士後期課程に進学を考えている方へのメッセージ
博士課程に進学を考える上で、私の周りでは、博士課程に進むと結婚や育児のタイミングが心配だという悩みがありました。しかし、博士課程を修了後、仕事でも家庭でも自分の夢を実現している先輩方がたくさん居られます。私は、今年出産を予定していますが、先輩方に相談しながら、自分の夢を叶えていきたいと考えています。
大井 彰子
職業 大学病院管理栄養士
〇プロフィール
2007年3月 徳島大学医学部栄養学科卒業
2009年3月 徳島大学大学院栄養生命科学教育部
博士前期課程人間栄養学科専攻修了
2012年3月 徳島大学大学院栄養生命科学教育部
博士後期課程人間栄養学科専攻修了
2012年4月 滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部入職(現在に至る)
2015年4月 主任管理栄養士
〇現在の仕事の内容について
入院外来患者さんに対し、栄養管理業務(食事の調整や栄養量の見直し、NST:栄養サポートチーム介入の提案)、チーム医療(NST専従)、栄養指導(糖尿病透析予防指導含む)、食事調整(アレルギーの聞き取り含む)を行っています。
また地域の方向けに肝臓病教室や滋賀県肝疾患診療連携拠点病院技術支援セミナーの講師を務めています。
その他、献立業務や各種委員会への参加、新人教育、大学院生指導、実習生指導も行っています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したきっかけ
博士前期課程修了のタイミングと同時に恩師伊藤美紀子先生(現兵庫県立大学環境人間学部教授)のご栄転に伴い、細胞研究ができる人材が不足するため、宮本賢一教授(現龍谷大学農学部病態栄養学研究室)よりお声かけいただきました。
〇博士課程?博士後期課程に進学したメリット
人に説明する力や資料作成能力、根拠をもとに考えることが身につきました。そのため他者の学会発表資料や作成論文を添削することもできています。
また、入職後早期に非常勤から常勤、さらには主任管理栄養士まで昇進できたため生活が安定したと考えます。
〇博士課程?博士後期課程に進学を考えている方へのメッセージ
大学病院は診療だけでなく、教育?研修、研究を担っているため、前述のスキルを身に着けた人材の就職は有利だと思います。また、病院でも博士号を取得していると昇進しやすくなります。社会人ドクターもありますが、修了はなかなか難しいですのでキャリアアップを考える方には進学をお勧めします。私はそのような野望はなく、流れに身を任せ、博士後期課程、就職と人生を進めてきましたが。ただ、博士号を持っているということは社会からの期待を背負うことになりますので、もっと深く全力で取り組めばよかったと感じることがあります。専念できる時間を十分に生かせるようにしてみてください。
佐々木 祥平
職業 在ベトナム日本国大使館 一等書記官
〇プロフィール
2010年 徳島大学医学部栄養学科卒業
2012年 徳島大学大学院栄養生命科学教育部
人間栄養科学専攻博士前期課程修了
2014年 厚生労働省健康局がん対策?
健康増進課栄養指導室(栄養系技官)
2015年 国立研究開発法人日本医療研究開発
機構バイオバンク事業部基盤研究課
2016年 厚生労働省健康局健康課栄養指導室
2017年 厚生労働省老健局老人保健課(併任)
2018年 消費者庁食品表示企画課
徳島大学大学院栄養生命科学教育部人間栄養科学専攻博士後期課程修了
2019年 厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理?災害対策室主査
2020年 厚生労働省健康局健康課栄養指導室栄養調査係長
2021年 厚生労働省健康局健康課栄養指導室栄養管理係長
2022年 在ベトナム日本国大使館 経済班:主に保健医療関係(現在に至る)
〇現在の仕事の内容について
大使館では、主に厚生分野の業務を担当しています。一例として、食品?医薬品製造に関わる日本の企業に対して、ベトナム国内で円滑に活動できるよう支援するほか、ベトナム政府に対する政府開発援助(ODA)等を通じた、保健医療関係の開発援助事業を担当しています。
厚生分野の業務は多岐にわたっており、日本国内の情報を調べるだけでも苦労しますが、ベトナム政府、各国大使館、WHO等の国際機関との意見交換によって、各種制度への理解を深めています。こうした交流を通して、ベトナムに居住する日本人や日本企業への支援に加え、両国間の友好関係構築に関わっています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したきっかけ
徳島大学の修士課程に進学して以降、非常に良い環境で研究の機会をいただけていました。このまま修士卒で就職するよりも、博士課程に進学して更に専門性を高めることで、自分により自信を持って就職したいと感じたことがきっかけです。
〇博士課程?博士後期課程に進学したメリット
行政で勤務する際、エビデンスに基づく政策作り、政策紹介等の講演の機会を避けて通ることはできません。博士課程に進学したことにより、こうした業務に対応できる様々なスキルを身につけることができたと思います。また、現在勤務している大使館では、国際機関?各国大使館と保健医療分野について幅広く意見交換する機会がありますが、博士課程での経験によって、こうした業務にも対応できるようになったと思います。
〇博士課程?博士後期課程に進学を考えている方へのメッセージ
博士課程への進学か就職かを考える際、「進学すると、進路?就職先が狭くなる」という意見をよく耳にすると思います。しかし、私はこれまでの経験から、修士卒では経験できなかったであろう業務をたくさん経験することができ、「進学すると、むしろ進路?就職先は広くなる。」と考えています。ただ、その考えは個々人が選択する進路によって変わってくると思います。将来なりたい自分をイメージしながら、進学するか否かを決めていただければと思います。
氏家 翔子
職業:医療法人社団三愛会三船病院 看護師
〇プロフィール
2011年3月 徳島大学医学部保健学科看護学専攻卒業
2011年4月 医療法人第一病院 入職
2013年3月 徳島大学大学院保健科学教育部博士前期課程修了
2013年4月 医療法人社団三愛会三船病院 入職(現在に至る)
2015年3月 看護主任昇任
2016年3月 徳島大学大学院保健科学教育部博士後期課程修了
〇現在の仕事内容について
香川県丸亀市にある三船病院で看護主任として勤務しています。三船病院は、精神科救急急性期病棟をはじめ、精神療養病棟、認知症治療病棟、身体的に不自由な精神障害者に対応した特殊疾患病棟などを有し、幅広い精神疾患の治療、看護、リハビリテーションを行っている精神科病院です。当院の理事長は、公の病院に匹敵する看護や教育体制を目指すという方針を示しており、そのために、大学院卒の看護師を管理者に登用しています。そのような方針のもと、私は療養病棟の看護主任として直接ケアを行いながら、看護師長とともに管理業務を行っています。特に、現任教育を中心に担当しており、新入職員への教育や指導、看護研究や研修レポートの指導も行っています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したきっかけ
学部や修士課程で看護研究を行ったことで、研究への興味が湧き、人生で一度くらいは研究漬けになる日々があってもいいな、と考えていました。研究の手法そのものへの興味もありましたが、看護の場面で何を研究テーマにするのか、研究の結果をどのように現場に活かすのか、という点にも深い興味がありました。
〇博士課程?博士後期課程に進学したメリット
実際に精神科の患者と関わっていると、精神疾患があるだけで、たくさんの社会的スティグマを抱えながら生活していることを感じさせられます。私は、一人でも多くの人に精神疾患について正しく認識してもらいたいと思っています。博士課程に進学したことで、研究?教育について学ぶ機会があったので、まずは医療従事者、今後医療を目指す学生に研究や教育を通じて精神科看護や精神疾患への理解について広める役割があると考えています。このように考えられるようになったこと、実践する機会に恵まれていることが、一番のメリットだと思います。
〇博士課程?博士後期課程に進学を考えている方へ
博士課程の3年間、1つの研究テーマを深く学び、探求していく作業は決して楽なものではありませんでした。私は学部から博士前期?後期課程と続けて進学しました。そのため、新人看護師として仕事を覚えつつ、大学院での授業を受け、研究を行う必要がありました。職場の方には迷惑をかけていたと思います。しかし、新人看護師だからこそ、周囲からのサポートも得やすく、温かく育てて頂きました。また、特に博士号の取得に向けては先生方にも手取り足取り教えて頂けたと思っています。博士課程で学んだ一番大切なことは、課題解決能力だと思います。日々生じる臨床上での課題にどのように向き合えばよいか、その方法を学べました。博士前期?後期課程あわせて5年間、大変苦しく悩むことも多かったのですが、その後の臨床は一つ一つの課題が楽しく思えるほど道が開けたように感じます。ぜひ大学院で学びを深めてみてください。
笠井 亮佑
職業:徳島大学大学院医歯薬学研究部 助教、診療放射線技師
〇プロフィール
2011年3月 徳島大学医学部保健学科放射線技術科学専攻卒業
2011年4月-2022年9月 徳島大学病院医療技術部診療放射線技術部門
2019年3月 徳島大学大学院保健科学教育部博士前期課程修了
2022年3月 徳島大学大学院保健科学教育部博士後期課程修了
2022年10月 徳島大学大学院医歯薬研究部画像医学?核医学部門 助教
〇現在の仕事の内容について
診療放射線技師として病院勤務の経験を経た後、現在は、自身の母校である徳島大学にて助教として勤務しております。診療放射線技師免許が取得できる学校にて、将来の医療従事者を育成する教育と研究に従事しております。まさか自分が受けた授業を自分が担当するとは、夢にも思いませんでしたが、学生時代に理解が難しかった点や、臨床で学んだことを授業に活かせるよう工夫をしています。特に、変化の激しい医療機器を扱う分野ですので、最新技術には常に関心を持つようにしています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したきっかけ
病院で診療放射線技師として勤務する中で、医療機器はどんどん発展し便利になる一方、より複雑化し、装置の原理や構造が理解できない部分ができてきました。表面的な知識ではなく、より深く学びたいという気持ちから進学することを決意いたしました。特に博士前期課程から後期課程への進学は、学ぶのであれば最後まで学ぶべきとして、後期課程への進学をしました。
〇博士課程?博士後期課程に進学したメリット
まず一番大きなメリットはいろんな角度から対象を見ることができるようになったことです。これまで必要なことは自分で学んで対処してきましたが、博士後期課程へ進学し、教育を受けることで圧倒的に成長できたと実感します。具体的には博士前期?後期課程ともに数学やプログラミングを駆使して研究教育を受ける分野へ進学したので、医療分野とは違った物事の捉え方や理論の重要さを知ることができ、新しい医療装置を目の前にしても、どういうアプローチで使いこなせるか、どのような知識が必要かなど、客観的に自分を測ることができるようになりました。私が、博士後期課程で学んだことはコンピュータ断層撮影装置(CT)についてです。CT装置は現在日本の画像診断にはなくてはならない存在ですが、いかに高速で、高品質な画像を低被ばくで、得られるかという難問に今もなお活発に研究されている分野です。CT装置から画像が得られるまでには、数学的な手法を用いた画像再構成が行われます。特に、私は画像再構成手法の開発の研究を行ってきました。具体的には、画像再構成では再構成すべき真の画像と再構成された画像とを測る、距離のようなものを設定し、この距離を小さくすることを目指します。
実は、近年の機械学習にもこの手法は利用されており、今の研究基盤となっています。
〇博士課程?博士後期課程に進学を考えている方へのメッセージ
迷っている時間がもったいないです。大学院に進学するメリットが見出せない方がいますが、それは博士号が単なる資格としてしか捉えられていないからではないかと思います。もちろん博士号取得を目指しますが、博士課程?博士後期課程在学中に学んだことが本当に価値があるものであり、想像できないほどの学びを得られます。また、私のように病院勤務から大学教員になるなど人生の選択肢も増えます。何度も言いますが、迷っている時間がもったいないです。
安藝 健作
職業:徳島大学大学院医歯薬学研究部 准教授
〇プロフィール
2010年3月 徳島大学大学院保健科学教育部博士前期課程修了
2012年4月 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 助教
2013年3月 徳島大学大学院保健科学教育部博士後期課程修了
2015年4月 徳島大学大学院医歯薬学研究部 助教
2020年4月 徳島大学大学院医歯薬学研究部 准教授
〇現在の仕事の内容について
徳島大学医学部保健学科検査専攻の教員として主に血液学、免疫学や輸血学を学生に教えています。講義の準備は資料作成から始まりますが、学生に間違った知識を教えないように毎回自分自身も勉強する気持ちで準備を行っています。また、座学だけではなく実習も行っていますので、準備から実施まで非常に大変ですが学生教育にやりがいを感じながら日々の業務を行っています。
その他にも、大学職員として様々な研究を行っています。研究テーマとしてはいくつかありますが、現在は「NK細胞機能の基礎的研究」に力を入れて取り組んでいます。近年がん治療にNK細胞などを用いた免疫療法が検討されていることから、それらの基礎的データとなる研究や漢方薬によるNK細胞活性化についての研究を行っています。
教育と研究の両立は時間の問題もあり大変ですが、楽しみながら日々仕事を頑張っています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したきっかけ
もともと免疫学に興味があり、もう少し勉強したいという理由で博士前期課程に進学しました。今思えば、明確に何がしたい、何かになりたいという思いはなくほとんど「勢い」や「流れ」だったような気がしています。もともと研究にもあまり興味はありませんでしたが、博士前期課程に進んで研究を進めていくうちに研究することの面白さに気づき、また、TAとして後輩学生の実習のお手伝いをすることで人に教える、教育するということの面白さにも気づいたことから、そのまま博士後期課程に進学し、それが現在の仕事に繋がっています。
〇博士課程?博士後期課程に進学したメリット
博士課程?博士後期課程に進学したメリットはたくさんありますが、一番は研究に没頭する時間ができたことです。学部時代も研究する時間はありましたが、臨地実習や国家試験に向けた勉強のため研究期間があまりなく与えられた課題をこなすだけ終わってしまいました。私の場合は、もともと研究に興味があるタイプではありませんでしたので大学院に進学したことで研究に興味がわき、また大学院生活は研究のための自由な時間があるため、研究に没頭することができました。研究は時間がかかりますが、時間がかかったからといって必ず上手くいくわけではありませんし、むしろ失敗が多く時に心が折れそうになることもありますが、根気よく続けることでいつか結果が出ます。そのことに気づけたことが大学院に進学した私にとっての最大のメリットであり、研究だけではなく学生教育においてもコツコツと我慢強く続ければいつか結果が出るという私の信念となり、今現在の仕事において活かされています。
〇博士課程?博士後期課程に進学を考えている方へのメッセージ
大学院進学は確かにお金も時間もかかりますが、この期間に研究に没頭し、壁にぶち当たった時に色々な角度から様々なアプローチで取り組んで自分の力でその壁を乗り越えるという経験は何事にも代えられないものです。是非その体験をみなさんにもしてほしいと思います。ただ後悔もしてほしくありませんので、ある程度の将来のビジョンを持っておくことは大切かもしれません。また、研究だけではなく進学によって専門性を必要とする職に就きやすくなるメリットもありますので、修士以上の学位が必要な職に興味がある人には進学をおすすめします。その他にも、自由な時間がたくさんありますので、自分自身を見つめ直す良い時間になるかもしれません。
最後になりますが、私が担当する学生によく言う言葉をみなさんにもお伝えします。
「少しでも興味があるなら深く考えずにとりあえず進学してみたらいいんじゃない?」